ドライブでのエピソードということで、ある日のドライブデートのことを思い出しました。その昔、季節は夏で暑い日が続いていました。付き合っていた彼氏と一緒に彼氏のアクアで海水浴に行きました。その帰り道での出来事です。

当時のテレビコマーシャルで好感を持っていた車でした。彼氏は私と付き合う前からすでにこの車を持っていたので、私の希望を聞き入れてくれたというわけではなかったです。チャンスができたら一度は運転してみたいなと思って彼氏に何度が頼んでいました。でも彼氏はなかなか私に運転させてくれなかったので、不満に思っていました。

学生の頃ではありますけど普通自動車免許をすでに取得していましたし、たまに女友達とレンタカーを借りて一緒に近場をドライブすることもあったのです。日が暮れて夜になったので、帰る途中にあったファミレスに立ち寄り、二人でくつろぎながら夕食を食べました。ファミレスから出た頃には、すっかり夜中近くになっていました。

県道沿いだったので、通る車の量も減っています。彼氏が普通に運転していたら、突然ライトが消えました。えっ、と思って驚いていると、立て続けに異常事態が起きました。エンジンの音がしなくなりました。スピードが遅くなりました。彼が何度かアクセルを踏み込みます。でも、何度踏んでもエンジンが反応しなくなってしまったのです。運転席の前にある各種のメーターを覗き込んでみたら表示が全て消えていました。車はゆるゆると速度を下げて止まってしまいました。

幸い彼氏の運転中に後続車はいなかったです。それで、後ろからぶつけられたり、クラクションに驚いたりすることもなくてすみました。二人で顔を見合わせて、出てきた言葉は「どうしよう」でした。「こんなところで」。「こんな時間に」。「困ったなあ」とため息です。

「これはエンジンの故障じゃなくて、たぶんバッテリー上がりみたいだ」と彼氏が言いました。実際、ハザードランプのボタンを押しても前後のウインカーの部分は点滅しません。「電源ケーブルをほかの車と繋げてエンジンを掛ければ動くはず」ということを彼氏が言いました。しかし真夜中で人家も疎らです。自動車用品店も閉まっている時間で近くにはありません。このトラブルにどうすればいいのか、彼氏も呆然としていました。

この道をしばらく進んだ先にあるガソリンスタンドが、深夜でも営業していることを彼氏が思い出しました。そこで彼氏が、そこまで車を押し、私がハンドルを握って運転することになりました。いつかこの車を運転したいと思ってはいましたが、普通にアクセルペダルを踏んでエンジンの力で動いている本来の状態で運転したかったです。こういう形で訪れた運転の機会でしたが、何だか不本意で少し寂しかったです。

始めは彼氏一人で動かせるのか心配でしたが、軽い自動車だったせいもあってか、押された車はゆっくりと動き始めました。スピードも徐々に上がっていきます。ハンドルがロックしてしまわないように気をつけながら運転しました。

下り坂に差し掛かるとすぐにスピードが出ました。彼氏の手から車体が離れ、見る見るうちにスピードが上がります。危うく彼氏を置きざりにしそうになるほどでした。走って汗だくになって車を追いかける姿がバックミラーに写っていました。それを見ていると、昔、再放送で見ていた刑事ドラマの若手刑事のことを思い出して笑ってしまいました。そこから二十分ほどしてガソリンスタンドが見えて安心しました。無事にエンジンを動かせたので、そこから走って、家まで送ってもらいました。